HAL'S DIARY
オーナーのひとりごと。買付けの裏日記など。
きまぐれに更新しています。

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ジャズ関連の本
2019/09/23

最近、もう一度過去の文献・ジャズ批評の本などを読もうと思っている。

以前は相当数のジャズや音楽関係の本を持っていたのだが、店を開いた時に大量の本も一緒に売る事にした。
売れ行き方を見ていると、私の好きな本や、売りたくない本ほど、なぜか先に売れて行く。
なるほど「商売という物はそういうもんか」と思った。
そう言えばレコードもそういう傾向にある。モトエ。
従って、言ってはいけないが,売れ残ったものは、あまり好きで無かった本ばかりでもある。
暫くして余裕が出来た頃、あらためて好きな本を購入し直したりした。

無さそうに見えて、意外に沢山あるのがジャズの本でもある。
それでせっせと読んでみたけれど、外国で書かれた本の方が有意義である事が多い。
考えればそれは当然で英語の国の音楽であれば、文献も沢山あるし、証人も近くにいたという事でもある。
また当時の社会性や文化的な範疇におけるジャズの位置の堀下げも彼らの方が身近でもあり、しっかりと把握されていて、研究成果として、例え偏っている思想に基づいていたとしても、いや自分の立場を示しているからこそ面白いのだ。

そもそもジャズ評論は70年代あたりまでに出尽くした感はあるにもかかわらず、我が国の評論家たちは、もう書くことが無くなっているにもかかわらず、無理やりに書いているから、過去の評論家たちが使っていた表現がそのまんま写しているかのようである。
また、せっかくインタビューしたのに、複数の証人の話を聴いていないので、嘘を書いてしまった例もある。
ブルーノート・レコードのコレクション自慢をしているような評論家、流行って来たジャンルばかりせっせと取り上げる評論家、流行っているレーベルばかり持ち上げている評論家、といったひとが多く、昨年辺りから今更買って読むものかという気になってしまった。

また実際、音楽的にも最近のクラシック系というかポップス系というか、言って見れば「CDジャズ」の事などは、評論家の意見なども聴かなくても困る事はない。
なにしろ音楽から、有名になりたい、有名になりたい、と聴こえてくるから。

ERROLL GARNER “CONCERT BY THE SEA”
2019/09/22

ERROLL GARNER “CONCERT BY THE SEA” COLUMBIA CL883 (USA)

当店で過去、エロール・ガーナーのレコードを欲しいと言ったお客様はわずか2人だけである。
そのうちの一人はスエーデンから来た旅行者であった。
何と言う人気の無さ、私は気が遠くなりそうである。

ところが、豈(アニ)はからんや、当アルバムだけはなぜか大人気である。
不思議なミュージシャンである、いや不思議なレコードである。
それで謎解きのつもりで聴いて見ると。
たしかに聴けばたちまち強烈なスイング感に捉われ、心地よさのジャズの典型ともいえる。
シンプルで、派手な音色は粋で、しかも正確無比、モダンでありながら過去のジャズを失わない、さらにこれほど見事にジャズにおけるエンターテイメントを現わしたアルバムは他に類を見ない。
ノリの良いジャズの断トツの一番なのである。
サウンドもちょっと荒々しく、強い音でグイグイと入っているのがまた良い。

それなのに他のアルバムもまた立派な作品ばかりなのだが、その力作もマニアの間では無力な事と言ったら。
まあ、それが社会というものであろう。
それでもヨーロッパにおいては当時大人気だったと、現地のジャズファンに聞いて驚いた。
オランダでは同国オンリーの少数プレス作品もあるらしい。
人の好みは千差万別。
蓼(たで)食う虫も好き好きである、と言えばすべて解決。

ところで、この作品は1955年カリフォルニアのカーメルで行われた。
ジャケットを見るとなるほど、それらしい海岸である。可愛らしいと見える美女が手を広げている明るいカリフォルニアの風景である、といっても沖縄のような真っ青な海でもないんだけどね。

ところで、私は一度だけカーメルに行った事がある。
ヒッチコックの映画「鳥」の撮影された家があるというので行ってみたかったのだ。
カーメルはサン・フランシスコから車で南下して3・4時間で着く。
モントレーとカーメルの街が隣接していて、特にカーメルのこじんまりした高級感ある洒落た街並みが素晴らしい。
近くに水族館があって、見に行ったのだが、せっかく買った入場券だったが、外の港にラッコが沢山泳いでいて、ラッコが餌を取って来ては石で貝殻を叩いて中身を食べる様子が面白く長時間見とれてしまい私はつい中に入る事を忘れ、水族館の係りの人にもったいないと笑われた。
夕食のレストランで、大きなメインロブスターをレモンバター・ソースで食べた味はダイナミックで、手がべたべたになりボールの水とナプキンを何度も取替えてもらいながら食した事は、生涯忘れられない味である。
また行きたいな。
私は旅行会社勤務であり、更にレコード屋として海外旅行は何度も行ったが、観光旅行はほとんどしたことが無いので余計に良い思い出である。
今日もあらぬ方向に行ってしまった、一体なんの話だったか。

GEORGE LEWIS “AS RECORDED AT MUNICIPAL AUDITORIUM”
2019/09/21

GEORGE LEWIS “AS RECORDED AT MUNICIPAL AUDITORIUM” HUP RECORDS (USA)

私は古いジャズの中ではJAMES P.JOHNSON や このGEORGE LEWIS などが好きである。
GEORGE LEWISは風情のあるクラリネットのサウンドに痺れてしまう。
その中でもゆったりしたちょっと悲し気なバラードなど、街に現れたらどこまでも後を付いて行ってしまうに違いない、まるでハーメルンの笛吹き男の話のように。

それで、当アルバム。
HUPというレーベルの事も良く分からないがニューヨークの住所になっていて、サラトガという北のほうの良い街である。きっと個人がお金を払ったのであろう。
このジャケットも個人で作ったものであるらしく、様々な種類のジャケット、それも汎用ジャケに紙を貼っただけのシンプルな作りで、しかも紙の位置が上に行ったり下に行ったり気まぐれな感じも出ていて、注文があればせっせと作っていた事がしのばれる。
ブートかもしれないと思いながらライナーを見ていたら、最後の方に、4ドルをニューオリンズの住所に送ればジャズクラブのメンバーシップになれると書いているので、意外にブートでもなさそう。
数種類あるジャケはどれがオリジナルとは言い難いが、どうも昔の人の話では、この写真のものが古そうであるが断定は出来ない。

1951年や1952年の演奏で、この作品の名誉を押し上げているのはなにより1944年に彼自身が作曲した「Burgundy Street Blues」の存在につきる。
勿論人気曲であり何処へ行っても必ずリクエストされるのであるし、また何度か録音もしたのであろう、しかしどの演奏をきいてもそれぞれ味わいがあり、それぞれの感動がある。
なんとも言えないブルースの良い曲(歌)である。
ほぼ私家版であろう当アルバムも決して、大変良い音とは言えないのだが、それでも心に沁みるだけの音質は保っている。
素朴なクラリネットのジャズの演奏はかくありたいと願う音色で、なんども聴き返してしまう。
そしてただ、「自分も生きて来て良かった」と思うのである。

何しろ彼が1900年生まれであり、ジャズエイジと呼ばれる1920年代からジャズを演奏していたのだ。しかも1950年頃ウエストコーストなどを中心にニューオリンズ・ジャズのリバイバルがあり、それがまた彼の音楽人生もまた僅かな収入も、一段アップしたのだ。

録音場所がMunicipal Auditorium(Congo Square) New Orlieans となっているから、ニューオリンズの市民公会堂であろう、ネットで調べたところ、エルビス・プレスリーやレッド・ツッペリンの演奏などが華々しく書かれているものの、ジョージ・ルイスの話題は出て来なかった、残念。
しかしこの公会堂も2005年のハリケーン・カトリーナの洪水で大きな被害を被り未だに再建がされていないらしい。何しろ市の最高の場所でもあり、市民の誇りであるのだが市民の気持ちと資金の問題であれば、どうしようもない。

しかし、私の話も公会堂の方に行ってしまっては、どうしようもない。
今日はここまで!

JOHN COLTRANE “LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN”
2019/09/20

JOHN COLTRANE “LIVE AT THE VILLAGE VANGUARD AGAIN” IMPULSE A-9124 (USA)

今回の入荷はモノラル盤である。
今まで何度も当アルバムを扱ってきたのだが、モノラル盤は珍しい。
そもそも最近はオレンジ・ラベルのオリジナル盤も珍しくなってきたと言うのに、モノラル盤となると確率はぐっと下がって、オリジナル盤の中で10分の1弱、という確率なのである。
さもありなん、録音が1966年で、その頃は既にステレオ盤の発売に移行していた時代なのである、しかしマーケットを鑑みて少量モノラル盤を作成したのであろう。

盤の件でちょっと面白い事があるので記しておく。
まず、ステレオ盤、ジャケットの上部が黒い部分が大きく空いていて、左上にSTEREOと印刷されている。
ジャケットの番号は不思議な事にAS−9124となっておらずA-9124となっている。
所がラベルは ちゃんとAS-9124となっていて STEREOと記載もある。
もちろんスタンパーもAS-9124である。
一方モノラル盤、ジャケットの上部に空きは無く、左側に寄せた写真は大きくて、右下にMonauralと印刷され番号はA-9124である。
ラベルであるが、当然A-9124となっている。
ところがモノ盤であるのだが、時々B面にSTEREOと印刷されてしまった物がある、ミスプリントなのであり、スタンパーはA-9124となっているので、やっぱりモノなのである。まあ、どちらもオリジナルである。

演奏の話。 私はこのアルバムが大好きである。
亡くなる一年前の演奏でAliceとも共演し、精神的にも充実していたか自由度が増しており、Cosmic Musicなどのアルバムやら、日本ツアーやらで、良い年でもあった。
特に、このアルバムはNaimaとMy Favorite Thingsの2曲のみで、A面の終盤6分はJimmy Garrison一人での前奏となっていて、心が揺さぶられるソロである。
My Favorite Thingsは生涯に大体3回の正式発売があり、Atlantic1361(My Favorite Things) とImpulse9161 (Selflessness)という事になるが、Selflessnessは1965年録音であるのに、9124の方はたった一年でここまで変わるかとも思える変貌は見事としか言いようがない。
特に、Jimmy Garrisonのソロは、翌年のSheppとのDonaueschingenでのソロと重なって、つい感傷的になってしまう。

いや、久しぶりに感動した。

八方美人
2019/09/19

数いる外国人観光客。
中には、タクシーを止めるのに、実車の車や、反対車線のタクシーにまでずっと手を振り続けている人もいる。

今日は、近くの大ガードの交差点の角に立ち、懸命に手を振っている。
周囲にいた人は何だろうと目を向ける。
それがタクシーを探しているとわかって来たのだが、本人は停車中のタクシー、反対車線のタクシー、遠くのタクシー、ありとあらゆるタクシーを捕まえようと、大騒ぎ、その内に交差点の中央にまで出て行ってしまった。
四方八方に手を振る。
みれば結構な美人。
これぞ本当の八方美人。

パソコン
2019/09/18

店のパソコンのスピードが遅いのだが、それほど古くもなし買替えするにも早すぎると、なんとか我慢してやってきた。
しかし、あまりに遅いので業務上困ってしまった。

遂に決心し、メモリー増設を試みる事に、まず、ネットワークにしてある本体デスクトップは16GB増やすことで、これで少しスピードが上がった。
次はノートパソコン、面倒な事は分かっているので近くのビックカメラに相談に行くと、デルのノートに関しては取扱手順が非常に面倒なので、メモリーの増設なども受け付けていないと。
それなら自分でやらねばと、対応のメモリーだけ購入して帰った。
さて、いよいよ挑戦。
ネジが一杯あるなあ、ひっくり返したりしながら進むと、キーボードの下側に付いているフラットケーブルを外す時に、小さなストッパーを繊細だからと、ピンセットを使ってちょっと力を入れた瞬間にポキンと折ってしまった。
あっ!思わず血の気が引く、あらまあ、何と言う事でしょう!
これって、一巻の終わりって事?

それで考えたら、確かビルの上の階にパソコン修理という看板があった事を思い出して、相談に行った。
そうして話を聞いたところ「ダメでしたね」の一言。
フラットケーブルは繊細なので、手で扱う事が肝要なのだそうだ。
それを知っていれば、こんな事にならなかったのに。
その後、彼に依頼して重要なデータを取り出していただいた。
最初から相談に来てくださいね、と言われてしまった。

しかし、安いパソコンは仕事には使えないという事がやっとわかった。
残念無念

太っ腹
2019/09/17

私はちょっとの事では騒ぎ立てたりしない大物である。
気は優しくて、力持ち。
力は無いけど。

今日の昼、崎陽軒のシュウマイ弁当を食べていたら、シュウマイが一つ、箸から滑って床にコロンと。
せっかくのシュウマイが、800円の弁当なのに、どうやって拾おうと心の中で葛藤があった。
私は思わず血の気が引いてゆくのが分かった。

いやいや、でも私は大物である。


RITA REYS “JAZZ PICTURE”
2019/08/30

RITA REYS “JAZZ PICTURE” PHILIS P 08062L (HOLLAND)

リタ・ライスの人気は、取り立ててブームがあったわけでもないが、何となく好調な売れ行きであった。
それが最近、リタ・ライスはあまりリクエストが無くなった。
以前は、仕入の買付けに行くとなれば必ずお客様から「買ってきて下さい」等と言われていたのだが。
現在の人気としてはCOOL VOICE vol.1 とvol.2だけが廃盤価格が圧倒的で、他の物はちょっと落ち着いた感がある。
価格が安いのは良い事であるのだが、それとは逆行して、物が出て来なくなった。
そういう物なのである、「物」と「人」との関係は。
しかしそれはオイトイテ。

リタ・ライスのレコードを聴いていると、感心してしまう。
この人のは本当にジャズ・ボーカルだなあと。
彼女が1960年に、結婚したばかりのピアノのピム・ヤコブスとリリースしたMarriage in Modern Jazzの次のアルバムで1961年の発売となった自信作である。
この頃の作品はどれも充実した出来で優劣つけ難い。
ここでは、ドラマーにKenny Clarkeを呼び、よりアメリカのジャズらしい雰囲気を出している。
演奏は10月12日、アムステルダム近隣の街ラーレン(Laren)のSinger Concerthallで夜7時半から行われた。
観客は手に汗を握るスリリングな歌に興奮したという。
メンバーは、Pim Jacobs, ギターWim Overgaauw, ベースは弟のRuud Jacobs, それにKenny Clarkeを入れたオランダの代表選手による録音である。
バックの演奏は歌を持ち上げたり引いたりして完璧。
彼女の歌は、見事にジャズを感じさせる完璧な歌唱、しかも歌は正確で、可愛くて、強くて、惚れ惚れする歌なのである。

彼女はヨーロッパ最初のジャズボーカル・ファースト・レディなのである。
その後、影響とは大きいもので、オランダはAnn Burtonという後輩も続き、その他、アメリカのジャズの歌に及び腰だったヨーロッパ各国においても、ジャズ・ボーカリスが次々と誕生するのであるから、その実力が凄かったとしか言いようがない。

是非、聴かれて頂きたい。

シルバーシート
2019/08/28

家内が珍しく怒っている。
「シルバーシートの乗車口の先頭で並んでいた、そこに電車が入ってきたら真後ろにいた20歳くらいの男の子が、突然私を押しのけて私の前に出て、そのまま一つしか空いて無かったシルバーシートの席に突進し、ちゃっかり座った」という。
確かに温厚というか、世間の出来事には「人それぞれ」だと、ちょっとの事では怒らない家内ではある。
「情けないと言うか、ああゆう若者がいる事が悔しくて」という事である。

シルバーシートに突進するのは、70歳過ぎた人生の終盤の人達の特権である。
若くてもシルバーシートに突進するのは、もう人生が終盤に差し掛かったという言う人達なのだから、しようがないんじゃない?
若くてもシルバーシートに座っている人たちは、可哀そうに寿命が迫っていて、お迎えが来ているんだよ、きっと。

という結論になった。

BILL EVANS “THE COMPLETE VILLAGE VANGUARD RECORDINGS 1961”
2019/08/27

BILL EVANS “THE COMPLETE VILLAGE VANGUARD RECORDINGS 1961”
CONCORDMUSIC (USA) 4LP Boxset

数年前に出たボックス・セットである。
あまりボックスセットは好まれないが、コレクターズ・アイテムとしては、マニアに取って宝物。
箱を開ければ、レコードだけでなく、解説・写真と嬉しい事は限りない。

さて、私も只のボックスならスルーをするところであるが、今回のボックスはちょっと面白い。
順を追って書くとまず音質が良い事。
レコード会社の常套句、「オリジナルを越えた」等という宣伝文句があるが、オリジナルを超えた再発など見た事はない。
このレコードも決して超えてはいないが再発としては上出来である。
地下鉄のブーンという音も再現可能。

それと写真がジャケットや本に使われたネガの写真がそれらしく赤鉛筆で囲ってある。
それぞれのテープの書き込みが興味深い。後に移ったレーベルでの書き込みもある。

なにより、なぜ、レコードに使われなかったかと思える出来の良い演奏「PORGY」の演奏を良い音で聴けるのも嬉しい。
これがなぜ使われなかったかというと、以前もどこかで書いたかもしれないが、観客のざわめきが一際大きいせいであろうか、オバサンの「わははは」という大きな声が入ってしまっている。
しかし、それにしても興味深い出来の良さ。

聴いていたら、あっという間に4枚聴き終わっていた。


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