THELONIOUS MONK “THE UNIQUE” | - 2020/11/05
- THELONIOUS MONK “THE UNIQUE” RIVERSIDE RLP 12-209 (USA)
今回は珍しいオリジナル盤である。 後発の切手のジャケも悪くないけれど、オリジナルの時代を感じさせるジャケットは風格がある。 ジャケの後ろを見ると、録音がハッケンサックとなっているのはVan Gelderの録音である。 BlueNoteやPrestigeの音とは違うけれど、かなりはっきりとした音色で気持ちがよい。
モンクのスタイルは、Be-Bopそのものではなくもっと独自性がある。 言ってみればファッツ・ウォーラーやカウント・ベイシーの後に彼が後継者として出現し、そのジャズの空間の重要性と音の簡素化が行われた。今まで日本の多くの評論家達が「シンプル」と表現していたのだが、シンプルではなく、「ジャズの骨格」を大切にし骨格にこだわったという事である。そして、それはあくまで黒人ジャズの伝統に則った、ジャズであった、という事に他ならない。 モンクにおいてはジャズの骨格がいかに重要であったかという事で、その骨格こそジャズの神髄であり、それがいかに優れた音楽であったかという証明でもあった。 我々はその事に、なかなか辿り着かなかったのである。
さて、モンクのアルバムの多くは自作曲であるが、Riversideにおける第一作目Plays Ellingtonはエリントン作品であり、当アルバムはスタンダード集である。 それだけに親しみ易い演奏でもあるのだが、そこはそれ、モンクであって彼の味わいが十分に感じさせ、決してただのスタンダードではない。
演奏はA-2のMemories of youはソロ演奏でシンプルかつ憂いを湛えた美しさに感動する。 Honeysuckle roseはファッツ・ウォーラーの得意曲であるが、モンクも随所にかつての伝統的なピアノ・スタイルを見せ、楽しげである。 聴いているこちらも感慨深いものがある。 Darn that dreamはモンクが原曲に忠実に弾き出すと、やがてペティフォードがゆったりとしかも落ち着いた音の運びで歩調を合わせると、そこに得も知れぬ美しさが広がる。 A面だけで十分に満足できるのであるが、せっかくなのでB面もちょっとだけ聴く。 Tea for twoなどもモンクとペティフォードの二人の音楽性が的を得た楽しげな演奏でウキウキする。 勿論ドラムのブレイキーはモンクの当時のお気に入り、相性も抜群である。 と言うわけで、あっという間に次々と魔術師の術にかかったように聴いてしまった。
ジャズは黒人の音楽であって、そう簡単に白人などに真似されてたまるか、と自信に満ち溢れた思いがひしひしと伝わってくる素晴らしい作品でもある。 私はジャズに親しみ出した頃から、今もって大好きなアルバムでもある。
しかし、オリジナル盤は珍しい。
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