Slide Hampton | - 2024/07/27
- UMEA BIG BAND“SLIDE HAMPTON IN MONTREUX” GAZELL GMG1225 (Sweden)
Mono盤
このレコードを聴くと、いつも思い出す事がある。 10年ほど前、某有名ビック・バンドのメンバーが、来日すると昼休みによく来てくれた。 その中にトロンボーン奏者がいて、常に何か無いかと聞いてくる、それで、このアルバムを聴かせたところ、アレンジから演奏からすべて最高だという。 それで値段を聞かれたので「1万円」というと、彼は「高くて買えない」私が「では、諦めな」彼「アメリカに帰ったら探してくる」 という事で帰って行った。 翌年、彼はやって来て「どこにもなかったし、誰も知らないと言う、であるから購入する」と言うので、私は一年間、仕舞っておいたレコードを下から出して、「去年から待っていたよ」と渡した。 2人で、回り道したと大笑いになった。
いや、それほど良いアルバムである。 彼の言う事にはトロンボーン奏者は、演奏中は暇なので、アレンジなど自分ならこうするとか、いつも考えていると、だからトロンボーン奏者は優秀なアレンジャーになるんだと、なるほどと納得した。
70―1年の演奏だが、アメリカの黒人はヨーロッパに行くと大変大切にされたので、非常に気分が良かったらしい。当然作品の出来も良くなる。彼SlideHamptonもまたその一人である。
70年、スエーデンのユメアで行われたジャズフェスティバルの出演者達で急遽編成されたビックバンドであるが、アレンジ及びコンポーズは彼が行った。その演奏が非常に好評で、伝説的な演奏として音楽ジャーナリストにも絶賛され、ファンの間でも有名になった。当時スエーデンはジャズ雑誌の数も結構多かったらしいね。
その勢いをかってスイスのモントルーに出演する事になり71年初夏、彼らはUMEA・BANDの名前で出演をはたした。訊いた話によると、ここでもまた演奏は大好評であったと。 それならば、それらの演奏を国民に聴いて頂こうと企画されたのがこのレコードである。 モントルーと言いながら、曲の数が少なかったので、A面は70年のUMEAの録音で、B面はモントレーの録音である。それしか音源がなかったとも言える。1曲はイエテボリの演奏を追加してある。要はかれらの最高の演奏の全てである。
しかしさすがに、いづれも甲乙付けがたいノリノリのビッグバンド・ジャズである。 UMEAでの演奏はギターのRune Gustafsson(グスタフソン)が一人で,バンドのサウンドをグイグイ引っ張り、これでもかと乗っていかせる感じが良く出ている。 素晴らしいプレイヤー達に感謝したくなる出来である。
もちろんモントルーの1曲目から期待を裏切らないビッグ・スイングである。 このレコード日本ではあまり有名にならず、私も海外に買付に行くようになって、現地のコレクターに教えられて知った。レコード屋冥利に尽きる。 本当に気持ち良くなる稀有な作品である。
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