ふる里 | - 2017/07/30
- もうすぐお盆。
今年こそは、いなかに行こうと思う。 混んでいる間は避け、盆が終わり いなかなりの賑わいも去った頃にでも 墓参りに行こう。
父も母も亡くなり、姉の一人も亡くなってしまい、徐々にふる里との縁も薄くなった。 ふる里は私の中でまぼろしとなって存在する。 もう何十年も前の 私のふる里。 今となっては道を歩いても誰も知った人はいない。 だが私の中では近所のおじさんやおばさんの顔がまだ生きていて、笑いながら「やっとか目だね」と声を掛けてくる。 そのふる里は、父がビールのコップを嬉しそうに口に運ぶ姿だったり、その傍にいて飲み過ぎないように口うるさく注意している母の顔だったり。 決して綺麗ではない、少し傾いでしまった柱が立っていたあの家。 私が東京に出て来てしまってから、火事で焼けてしまった、あの古い家。 家の向かいでキウリやトマトやらをちょっとだけ作っていて、夏の夕方は父が玄関を入る前にもいできたナスを「これで一杯やるか」。 「はいはい」と受け取った母の声。 たったそれだけなのに、私も十分に幸せだったあの家。
まぼろしのように私のふる里はある。 今年こそは、行こう。
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