HAL'S DIARY
オーナーのひとりごと。買付けの裏日記など。
きまぐれに更新しています。

前ページTOPページ次ページHOMEページ

買付の想い出
2015/12/17

私は海外に行くと、地下鉄とか国鉄の電車は良いけれど、バスと路面電車は乗る事が出来ない。
何故かと言うと、まず切符の買い方が分からない。
それから行き先が見えたらベルを押すとか、紐を引っ張るとか、景色を見ているとここだろうか、次だろうかと心配で仕方がないし、つい乗り過ごしてしまうから。

それで、もう数年前に亡くなってしまったが、アムステルダムの知合いのおじさんの家に行く時は、いつもタクシーに乗っていた。
ところがこれがまた、日本人と見るや朝だというのに倍以上の値段を吹っ掛ける。
おじさんは既に、タクシーと旅行者の関係を解っていて当然そういうものだとの前提で、それよりも何故電車に乗らないのだと、電車だと2ユーロだから絶対電車に乗れと言われ、ついに決心して電車に乗ったのだ。
まず、停留所で係や車掌に何度も確認し、また次回来た時の為に乗場や行先をメモし、それで緊張しながら乗った。
見覚えのある景色でボタンを押したのだが、タイミングが合わず案の定気付いた時には、次の停留所に停まった。
そこから、左側の番地が奇数なので、地番の数を数えながら歩く。
停留場の間など大して遠い訳では無い。
オランダという所は不思議なところで、夜はよく雨が降るのだが、ところが朝になり太陽が出て来ると雨が上がる。所々に水たまりがあったり、まだやや寒い朝の空気を吸いながら歩く。
そうして、遥か遠く離れた外国の自分の生活に全く関係のない、道なのだと思いながら、何度歩いたことだろう。
太陽は確かに同じ太陽かもしれない、だが、光も色も音も臭いも全く違っていて、ここはお前の居場所ではないと、教えてくれている。
なんとも悲しい商売だと思い、その反面、私の好奇心はそれをも上回る楽しさにも満ちていた。

道路の真ん中は電車が走っていて、歩道は石畳で同じような家と言うかアパートが続く、その家々はちょっと傾いだり、隣に寄りかかっているのだ。
そんな家に必ずといっていいほど貼ってある地番の数字を見ていないとどうにもならない。
カフェ、カーペット屋、小間物屋、不動産屋など眺めながら行くと、目的のアパートに近づく。
ここだここだと思い、彼の部屋は3階だと思い上を見上げると、すでに彼が窓に寄って下を見ている。
目が合うと、ニッコリ笑って、ドアの鍵を自動で開けてくる。
ホッとして暗い入口を入り、まだ取っていない新聞が床に散らかったままなのを、私が拾って下の階段に乗せる。
オランダのアパートは狭く、それも3階建てなので、階段も急。
息が切れ切れに上って行くと、お前は弱いなあと、からかわれるのだった。

部屋へ入ると、お茶かコーヒーかと訊かれ、一息ついてから商談は始まる。
商談中は自分の価値とその理由を述べて、だからこの価格だと、言わないといけない。
おじさんは、交渉という行為を好きらしく、はっきりしない人間を小ばかにしている所がある。
しかし、ただ自分の価格を言っても駄目で、何故この価値なだと言う理屈がないとウンと言わない。
そういう価値観のぶつかり合いというか、丁々発止というビジネス・スタイルにするのがきっと好きだったのだ。
私は商談でヘトヘトになるのだが、馴れると結構面白いものだと思うようになった。
交渉というものは、そもそも価格交渉であり、お金に換える行為であり、粘り強さであり、これらがビジネスの第一歩だと理解したのだった。

シルバーシート
2015/12/16

夜、地下鉄丸の内線に乗ろうとしたところ、私のすぐ後ろにいた若者3人、シルバーシートに向かって突進し、人を押しのけて3人並んで座って嬉しそう。
サラリーマン風のちゃんとスーツを着ていた。
余程お疲れだったのね。
可愛いなあ、若い子が座りたいという意思表示が。

しかしなあ、おじさん考えてしまう。
シルバーシートなのに。
日本人のほかはアジア系の有色人種も座って平気な顔をしている。
これは、不思議で仕方がない。

若者はこういう場所に近寄らなければ良いのにと思うのだが。
新しいケイタイだの、ヘンな見栄えのプライドは高いのに。
本当の心のプライドがないんだな。

昔はあったろうが、「ボロは着てても心は錦」って。

でも新宿は、最近はこんなのばかり。

ジャズ仲間
2015/12/15

あるお客様から電話が掛かって来て「今日はいるかい?」という事で、夕方来られた。
その内容は「もう歳なのでレコードは買わない」、それだけを言いたいから来たという事であった。
ちょっと話をして帰られたが、それも人生。
思うに、この方は自分が仲間の頂点にいて、いっぱい持っているレコードを気分で掛けて聴かせてあげる。
勿論素晴らしい事である。だが、ある高みに行っているので、これで終わり、一丁上がりということなのだろう。

夕方はいつもの仲良しの常連さんが来て、レコードの話で盛り上がっている内に、この間購入されたバルネの「Afternoon in Paris」のオリジナル盤の話になった。
彼は日本盤を持っていたのだが、だんだん物足りなくなってアメリカ盤にしてずっと満足していたが、ついにフランス盤を入手して、バルネのテナーを聴いた所、聴こえるサウンドは音楽の本質が違っていて、本当はこうだったかと驚いたという。
それで、何度も聴いたのだが、次にJohn Lewisの音に耳を集中して聴いてみたら、スイング感はあるは、メリハリはあるは、やっぱりジャズだったと、それで今度はJohn Lewisのレコードを聴いていると新しい発見があったと、これまた嬉しそう。
聴いて何かを発見する事が楽しくて仕方がない。
またオーディオも替えたり、音から「音楽の魂」を見つけ出す努力をされている。
私もそうだが、40年も聴いて来て、まだ新しい発見がある。

結局、切磋琢磨する相手がいたり、同じレベルの友人がいると、楽しさは倍になる。
友達は大事だなあ。
私も刺激されて、負けちゃあならない。

DAVID BOWIE & BING CROSBY
2015/12/14

DAVID BOWIE & BING CROSBY
“PEACE ON EARTH/LITTLE DRUMMER BOY” RCA BOWT 12 (England)

クリスマス用に仕入たアルバム。
当店も何となくクリスマスのシーズン用にレコードを仕入れている。
この他にスエーデンのJAN JOHANSSONとGEORGE RIEDELのJAZZ PA SEVENSKAというアルバムがある。
どちらも年末やクリスマスの為に一年中、探し求めたアルバムである。
年末に聴くと心が温まるので、個人的にも好きなのだ。

今回のこのデビット・ボウイのアルバムは、ちょっと凝っている、それは歌の相手がクリスマスといえばこの人、ビング・クロスビーが相手なのである。
ジャズファンがあまりデビット・ボウイを聴かない事は分かっているのだが、この作品だけは、ちょっと良いとおもう。
アルバムは12インチ・シングルで真ん中に、大きめな写真でに二人が並んでいる。
早速聴くと、話が始まる、
スタジオの前をビング・クロスビーが通りかかって、ふと中を覘くと、ボウイがいて、入って入ってと招き入れる。
そこで話が弾んで二人で歌を歌う事になったという設定。
その歌とは、実は二人が別々の歌を歌っているのだ。
ボウイがPEACE ON EARTH
クロスビーがLITTLE DRUMMER BOY
それぞれ、歌うと、ちゃんと帳尻が合うと言う仕組みである。
2人とも歌が上手いので、聴かせどころもちゃんとある。

クリスマスにいかがであろうか。
10年前は何枚も見つかっていたので、来客に端からお薦めしていたのだが、去年は一枚も無し、今年はやっと一枚。
それに7インチのEPもわずか一枚だけである。
12インチの方はフル・バージョン、7インチEPの方は台詞はなくて歌だけである。
いずれにせよ、どちらもレア盤である。

これを聴けば、だれもが心清らかに幸せな気持ちになれる。



オーディオの音量
2015/12/13

お客様に訊いた話。
最近、あるオーディオ・マニアの家でレコードコンサートなるものがあって出かけた。
ところが音量が大きすぎて、すっかり疲れてしまったと。
他の人は感心して聴いていたのだが、自分としてはもう沢山だったという話であった。

そう言えばオーディオ・マニアの家に行くと大抵は音量が大きい、いや「爆音」である。
それで、一日この部屋で聴いているのかと心配してしまう。
この人はきっと難聴になりはしまいかと。

五味康祐の本だったか、「レコードなどで音楽鑑賞をする際、ボリュームを上げ過ぎると、各楽器の音程は作曲者、指揮者が意図した以上のニュアンスの差が生じてしまう。したがって作品を鑑賞したいなら小さめの音の方がよい」という。
なるほどなあ、と思った。

ところが、「迫力」となると、これはある程度の音量は出したい。
マイルス・デイビスの日本が世界に誇る名盤「アガルタの凱歌」には注釈があって、出来る限りの大音量でお聴きくださいと書かれている。
しかし、真面目にその通りにして聴くと、その後耳がキーンとなった記憶はあるに違いない。
そんな音量が一日中では、耳も疲れてしまう。

では、どのくらいの音量が鑑賞に適しているかと言うと、私が聞いた話によると、もっとも他人に聴かせて良く聴こえる音量は、ボリューム目盛が「12時の位置」であると。
そこがまず、大きな音量の基本だという話であった。
しかし、「12時の位置」の音量も相当な大きさなのだ。勿論オーディオにもよるが。
時々聴いて満足しているオーディオ・マニアなら良いかも知れない。
だが、私のように家にいる時は必ず音楽を掛けていて、休日には朝9時から夜9時の間12時間ずっと音楽を聴いている人には「12時の位置」で通す事は不可能なのだ。
作品によって、例えば小編成をバックにした女性ボーカルなどは小さめに、ビックバンドは大きめに、と位置を探りながら聴く事になる。

爆音は,音は楽しめても、音楽にはならない。

SONNY STITT-BUD POWELL-JJJ JOHNSON “S.P.A.JAZZ”
2015/12/12

SONNY STITT-BUD POWELL-JJJ JOHNSON “S.P.A.JAZZ” ESQUIRE 32.049 (England)

これは珍しい英国盤。
本来の米国盤の元の名前は「STIT - POWELL - JJ」
という。

いってみれば別ジャケのヨーロッパ・プレスである。
PRESTIGEの7024番の英国エスクァイヤー・レーベルで作られたものである。
ジャケットは例によって米国盤に準ずることなく独自のデザインである。
このジャケットも又漫画風である。
3人の使用している楽器を、なんとなく書いて散らしてある。
その絵柄の可笑しさ野暮ったさが何とも言えず微笑ましく楽しい所がよい。
名前を 上の方から
SONNY P.
BUD P.
JJ J.
と苗字をイニシャルだけにし、それをタイトルに持って来て、「S・P・J・JAZZ」とした所である。
面白い。
もっとも、このアルバムはアメリカ盤も良く分からない絵柄なので、どっちもどっちという所である。

米国オリジナルのレコードもほとんど見ない一枚でもあるので、こちらもまた大変レアな一枚である。
勿論、スタンパーはRVG刻印のアメリカ製のスタンパーを使用している、マニアックな一枚でもある。

こういうのばかり出てくるエスカイヤー盤はマニアにはたまらない。

MILES DAVIS-MILT JACKSON “SEXTET/QUINTET”
2015/12/11

MILES DAVIS-MILT JACKSON “SEXTET/QUINTET” MUSIC LPM2047 (ITALY)

今日の入荷も珍しい逸品である。
何しろ、米国盤PRESTIGE7034のイタリア、ミュージック・レーベルで作られた珍盤なのである。
スタンパーは勿論、米国RVGスタンパーを使用している。
ただ、ジャケットは変えてあって、そこはヨーロッパのセンス、良いも悪いも自分達でやります、という事なのだ。
私もこれまで2・3回しかお目にかかった事はない。
ジャケットデザインはトランペットのピストン部分をデフォルメしてある。
なかなかのモダンなデザインである。
バックは真っ赤な、あたかもフェラーリやアルファロメオの赤い色を連想させる。
こういう赤い色は、いかにもイタリアという感じで良い。
それが持てばしなるような薄い紙。
なにかとても貴重な様子が伝わってくる。

いかにもコレクターズ・アイテム

ART FARMER “ART”
2015/12/10

ART FARMER “ART” ARGO 678 (USA)

昔から、私の好きなアルバムである。
持っていた日本盤からオリジナル盤に買い替えた時、色合いに風格を感じると同時に、ジャケットにコーティングがしてあったのを見て、何て幸せなのだろうと思った。
以来、好きな一枚になった。

なによりも、彼の肖像画がいい。
グレーのスボンに白いシャツといういたって簡素な服装で、椅子によりかかり、右手でトランペットをやや持ち難くそう、甲をこちら側にし、左手は朝顔の部分に親指と人差し指で計るかのように支えている。
口には髭があって、なかなかのハンサムな男である。
バックはブルーな壁にしている。
温和な様子が伝わって来て、見る人に安心感を与える人格ですよ、皆さん安心してお聴きください、と言っているようだ。
裏のライナーに画家についての言及があって、「Ernest Fiene」という画家だそうだ。
あまり聞かない人だなあと思いネットを見ると、結構情報が出て来て、絵も売られているようだ。
きっとアメリカではちょうど中堅どころの画家だったのだろう。
日本の松本竣介を思い出させるような、絵柄である。

音楽の方もまさにその通りで、ワンホーンで淡々と吹いた。
ミディアムテンポの曲が多く、聴く人の耳に入りやすい良い雰囲気である。
オットリした、ソフトな音色で、じわっと心に滲みて来る。
ピアノはトミーフラナガン。
スタンダードの中でもしっとりした曲調にした演奏が多く、「So beat my heart for you 」「Goodbye old girl」「Younger than springtime」等々、日本人好みの良い作風である。

こういうのは日曜日の午後、奥様にコーヒーでも入れて上げて一緒に飲みながら、お聴きいただきたい。
きっと、ジャズは嫌いだと言われないはずである。

ANITA O’DAY “ANITA SINGS JAZZ”
2015/12/09

ANITA O’DAY “ANITA SINGS JAZZ” WORLD RECORDS T244 (ENGLAND)

始めて見た、ちょっと珍しいアルバムの入荷。
アニタ・オデイのアルバムで「シングス・ジャズ」というのは聞いた事がない、ヘンだなと思い曲名を眺めていたら気が付いた。
これはVERVEの「SINGS THE MOST(8259)」のジャケ違いなのだと。
録音は57年、OSCAR PETERSON, HERD ELLIS (g) RAY BROWN(b) MILT HOLLAND(d)をバックにしたもので、同じくVERVEの名盤2000番(Anita)から続くものだっただけに、時期的にも内容的にも全く問題はない。

それにしても素敵な写真のジャケットだこと。
見ていると嬉しくなって、昔に見た映画「真夏の夜のジャズ」を思い出す。
彼女は白い衣装でステージに上って、ちょうどこんな感じで歌って見せる。
その美しくてセクシーな事、白人の良い所をみんな持っているかのような、映画を観ながらジャズというより、女としてのカッコ良さを一生懸命に見てしまった。
あの映画はきっと彼女のためにあったのだろうと、友人と話していた。
という話を思い出してしまったほど、このジャケットの写真の彼女は良い感じ。

映画の時とは衣装も違うので、なんとも言えないが、イギリスでのステージの写真でも使ったのだろうか、ノースリーブで、両手を挙げマイクの前に口を開けている写真である。
なかなか素敵なジャケット写真である・
それが、WORLD RECORD CLUBというレーベルから出ているのも面白い。
録音も悪くない。
タイトルが「シングス・ジャズ」だと言う通り、見事な、これぞジャズ・ボーカルと言える出来映えである。

見ていると、コレクター心がそそられる。

昇圧トランス入手
2015/12/08

知合いが「こんなのいりませんか」と持って来てくれた。
昇圧トランス
「MC TRANS JS 384」と記載がある。
モノラルのトランスである。
二つあったらよかったが、今回はひとつだけ。
多分、JS384という、単体のトランスを入手し、誰かが作ったのだろう。
淡いグリーンのなかなかの上手い造りである。

JSというのはデンマークのメーカーJORGEN SCHOU(ヨルゲン・ショウ)という会社で、オルトフォンのSPU専用のトランスとして有名であった。

ただ、私のイメージにあるのはキャップを被っているものだが、こんなシンプルな物もあったのだろうか。
マニアでないので、年代は特定できない。

音は、それほどガツン系ではないが、上品で繊細な良い音である。
また、昇圧比がそれほど大きくないので、カートリッジのやや出力の高いものに向いていると思われる。

ちょっと気になるトランスであった。

前ページTOPページ次ページHOMEページ

 Copyright 2025 HAL'S All right reserved. Initial up at 2001