OSCAR PEERTSON “WE GET REQUESTS” | - 2015/05/30
- OSCAR PEERTSON “WE GET REQUESTS” VERVE V6-8606 (USA)
彼の人気作入荷、今回はステレオ盤で。 タイトル通り、リクエストに寄るものという様子だけあってスタンダード曲が多く、さらっと弾いて、大変に聴き易いアルバムに仕上がっている。 人気のほどが伺える。
植草甚一さんの本だったと思うが、本のタイトルは記憶はない。 ただし、その内容は記憶していて、多分間違いない。 オスカーピーターソンを語る時に、必ず出て来る二つの単語があって、それは「テクニック」「スイング」だと。 ところが、この二つの単語を合わせるとピーターソンになるかと言うと、そうは行かない。 テクニックと言うのは、とどのつまりテクニックであって、それは飽くまでテクニックに過ぎない。 あまりに器用なので、それが禍でもあり、自分の器用さに抵抗する事が出来ず、三連音符、アルペジオなどでぶっ壊してしまう。 という内容だった。
結局、確か植草さんはピーターソンを、当時の何人かの評論家やマニアと同様に、決して褒めていなかったはずで、巧すぎて、自分のテクニックに溺れる人として書いていたと思う。
昔の人は厳しいな。 大体、私の一回り以上の上の世代、70歳以上とでも言うのか、そういう人たちのジャズメンの評価の仕方は特徴があって、若い時の演奏は褒めるけど、年齢が来た時の演奏をケチョン・ケチョンに貶すことが多い。 また、ピーターソン、キャノンボールなどは、必ず上手すぎて面白くないと片付ける。 それが自分たちの、通としてのスタンスという所のようである。 理由は分からないが、彼等が食うや食わずの厳しさが当たり前の戦中・戦後の時代を生きたからで、少々の残酷なことなど何ともないからであると思う。
そこにいくと、我々から下の世代は何となく、まったりと生きて来た時代なので、残酷な事は言わない、いや、言えない。 レスターヤング、ビリーホリデイ、チェット・ベイカーだって、後期の作品だってきちんと冷静に評価をするし、また、好きでもある。 若い方々はもっとその傾向が強いと思う、優しい世代である。 それは老いて行く或いは、絶頂期から落ちて行く事を、人生としてどう捉えるかという事を解っていて、リスナーとして己の事と重ねて考えることが出来るからである。 歳を取ったヤツが駄目なヤツというなら、今の自分をどうするのか?
ジャズを聴く事は人生を学ぶ事なのである。 そういう意味では、ピータ−ソンの作品群も聴いていると、人生の流れを感じさせるものがある。 私は年齢とともに、彼のピアノが好きになった。 また、共演のベースのレイ・ブラウンの演奏も見事だと、心から思えるようになった。 使っているオーディオの変遷による所は大きいかもしれないが、何十年もジャズを聴き、己の人生も下り坂になり、ツッパリも無くなり、どうでもいいやと悟ってから、やっと分かるようになったとも言える。
いや、そこまでしなくても解る方には、解る事である。
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