| Miles Davis (死刑台のエレベーター) | - 2022/08/08
- Miles Davis “Ascenseur pour l'echafaud” Fontana 660.213MR (France) 10inch
1957年12月に録音された、58年のフランス映画「死刑台のエレベーター」のサントラである。 なぜマイルスがフランス映画のサントラを演奏しているかというと、どうも57年の映画「大運河」のMJQによるサントラがエラくウケたらしくい。 時はヌーベルバーグの真っ最中、誰もが個性を出そうと張り切っていたのであるから、ジャズしかもアメリカの黒人を使ったらより新鮮だと思ったようだ。それであっちがMJQで成功したならこちらはマイルスとなった。 MJQは白人好みの静かなジャズであるから、マイルスならもう一つの静かなるジャズで効果があると踏んだのであろう。 正にそれがピシャリとはまった。
当時のメンバーであるモンクやコルトレーンは置いてきぼりにされ、マイルスは単身フランスに乗り込んだ。さて、置いて行かれたモンクとコルトレーンの演奏は57年のリバーサイド盤Monk and Coltrane (Jazzland 46)に聴くことが出来る、実に興味深い立派な演奏になっている。
さて、話は戻って、マイルスは一人でスタジオに行き関係者と会った。 そこで彼は、だれかテナーはいないかと聴くと、ちょうど今一人若いのがいるという。 ではと、会って見てちょっと演って見せてくれとマイルスが言うと、若い彼は、ちょっと吹いた。 マイルスは演奏について何も言わず「明日から一緒に演奏できるか」と訊いただけだった。若者は「ウイ」と答えた。それからフランスは勿論欧州にいる間、マイルスはヤング・テナーマンを連れて歩くことになる。 その若者こそBarney Wilen(バルネ・ウイラン)である。 良い演奏者は良い出会いを持っているものである。音楽だけに限らぬ。 バルネだけではない、もちろんRene Urtreger(ルネ・ウルトルジュ)にせよ、Pierre Michelot(ピエール・ミシェロット)にせよ、当時のフランスのトップクラスの優秀なジャズメンは最高の場面に遭遇したのである。
マイルスはこの映画の場面を見ながら、演奏をしたという。 その実力の凄さは、映画最後の方の、写真の現像をしている時に、証拠となる画像がすーっと浮かび上がって来る場面に、同時に音楽も又すーっと浮かび上がってくるようで、これ以上ないと思わせる絶妙のマイルのトランペットなのである。 映像と音楽の何のズレも感じさせない、妙な同一感の見事さは、私は映画を見る度に、いやレコードを何度聞いても、聴く度に、あの場面が頭の中に出て来るのである。
マイルスは凄かったねえー。
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