THELONIOUS MONK “MONK’S MUSIC” | - 2021/07/10
- THELONIOUS MONK “MONK’S MUSIC” RIVERSIDE RLP12-242 (USA)
こんなアルバムを掲載出来るとは何という幸せであろうか。 感謝の気持ちで聴き始めると演奏は「Abide with Me」という聖歌で始まる。一体いかなる展開を見せるのかと興味津々。 私は今尚何年聴いたか知れないが、聴く度に神聖な心持ちになる。 この曲は、William Henry Monkと言う人の作曲だとライナーに書かれている、1823年生まれ1889年に亡くなっていて親戚でも無かった。同じモンクさんだったという事で納得。 演奏は、管楽器だけでRay Copeland 、Gigi Gryce、 John Coltrane、 Coleman Hawkinsの4人。 管楽器だけの音は素敵だ、しかもこの四人とは、なんとも豪華な聖楽隊。 因みに、この曲は 賛美歌39番「日暮れて四方は暗く」という。
この曲が終わると直ちに「Well, You Needn't」になり、モンクのピアノは、聖歌の心をそのまま持ち続けるかのように非常に厳かに始まる。後ろのドロンドロンとしたWilbur Wareのベースも功を奏している。 いつものモンクの曲らしくトツトツ感とうねりが重なる実にグルービーな演奏である。 大声で名前を呼ばれてソロを始めるコルトレーンも充実している。この後のソロはコープランド、ウェアこのソロもゴリっと充実している、ブレイキーも体育会系なドラムで気合がある。そしてホーキンスと来るのだが、このホーキンスのソロは、こういうブルースの味わい一杯の男臭いサウンドは作品に味わいを与える、さすがキープニュースのプロデュースは良い、本当にジャズが好きなのだ。 3曲目のRuby, My Dearはリズムセクションとホーキンスのワンホーンで、聴かせ所である。 モンクのジャズ芸術の崇高なメロディに、ホーキンスのブルージーで揺れるような音の運びが何とも言えない。 この時ホーキンスは53歳、まだバリバリの現役、だが人生の詫び寂びも知った男の、得も言われぬ哀愁は心に響く。
という具合に真剣になってしまい、一曲づつ書いていたらキリがない。 とにかく、これほどのジャズは二度と生まれる事はなかろう。ジャズの色々な部分を聴かせてくれる、これを超す作品は中々お目にかかる事が無い実に素晴しい作品である。 この時セロニアス・モンク40歳 日本では四十にして立つと言うけれど、この歳は彼も実に立派な活躍をした年であった。 Thelonious Monk With John Coltrane (Jazzland JLP 46) Thelonious Himself (Riverside RLP 12-235) Mulligan Meets Monk (Riverside RLP 12-247) そして当アルバムと素晴らしい活躍である。
ところで、私が一番言いたかった事はこのジャケット。 この、写真は実にカッコいいのだが、なにか感じないか? そう、こんな荷車、キャリートラックだが、これはアメリカでは基本的に子供のおもちゃの扱い。 こんなのにスターは乗るか?スターを台車に乗せてジャケットにするかと。 プライドの高いモンクが乗るとも思えないのだが、どのような経緯であったのか分からない。 だが上から下までセンス良く眼鏡もお洒落で、書けばもう一枚書けるほどのファッションで決めた彼は、膝にアタッシュケースその上に楽譜、右手にペン、素敵な金時計の左手にタバコ、顔の表情も良い男。 兎に角、スポーツカーではなく狭い荷台に座って、そして見事写真に納まった。 ジャケのセンスの良さ、ストーリー性まで伝わる、このような作品は二度と産まれる事は無かろう。 しかし 考えると意外に砕けたユーモアあふれる人柄だったかもしれないと想像するのである。
モンクよ、誰もあなたに文句は言うまいぞ。いや時々ホーキンスは要らなかった等と60年前の仕事にケチをつける人がいるが、一体なにを聴いているのか!と叱ってやりたい気持ちである 何人も貴方に文句は言わせない!
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